正幸会病院が記録業務をAI前提に再設計 — 退院サマリ40分→4分・月386時間削減
正幸会病院とは
医療法人正幸会 正幸会病院は、大阪府門真市に拠点を置く56床の中小病院。急性期から回復期・療養期まで対応し、地域に根ざした医療を提供している。クラウド型電子カルテ「Henry AI」を提供するのは東京都新宿区に本社を置く株式会社ヘンリー(設立2018年5月)。
導入の背景と課題
中小病院を取り巻く環境は厳しい。病院の正規雇用看護職員の離職率は11.3%、中途(既卒)採用者では16.1%に達し(PR TIMES内掲載統計)、人材確保は経営の生命線となっている。医業利益が赤字の病院は約7割にのぼり、全国に約7,000ある中小病院は人材・資金の制約が特に大きい。記録業務は医療従事者の重大な時間的負担となっており、退院サマリ1件の作成だけで従来は約40分を要していた。限られた人員で地域医療を守るには、現場の生産性を根本の運用から変える必要があるとヘンリー代表取締役CEO 逆瀬川光人氏は語り、記録業務のAI前提設計に踏み切った。
導入したAI / プロセス
クラウド型電子カルテ「Henry」に生成AIを組み込んだ「Henry AI」を導入。2026年4月20日〜6月5日の実証実験期間に、音声入力とAI文書生成の2軸で記録業務を再設計した。音声入力では看護記録・リハビリ記録を発話後に自動整形し、記載漏れを防ぎながら情報共有の質を向上。退院サマリはAIが草稿を自動生成し、医師・看護師が確認・修正するフローに変更した。既存業務にAIをツールとして足すのではなく、「AI前提の業務フロー」として一から設計し直した点が本事例の核心である。
「AIはさらに大きな役割を担うようになり、これまでの「補助的な存在」から、AIを中心とした医療のあり方を念頭に置く必要があると考えています。」
── 東 大里(理事長/院長 / 医療法人正幸会 正幸会病院)プレスリリース 2026年6月29日
成果(数字)
実証実験期間(2026年4月20日〜6月5日)の実測値:
- 月間削減時間:全職種合計で約386時間削減
- うち音声入力:188時間削減
- うち文書(サマリー)AI:198時間削減
- 退院サマリ作成時間:40分 → 4分(約90%短縮)
- 看護記録作成時間:1件あたり約1〜2分
記録業務が重い組織が参考にできるポイント
本事例の差別化は「ツール導入」ではなく「業務フローの再設計」にある。音声入力とAI文書生成を組み合わせて2軸同時に効率化した構造は、医療に限らず、保険・法務・介護・建設など「記録・報告書作成業務が重い業種」に広く転用可能だ。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 2軸同時導入 | 音声入力(188時間削減)+文書AI(198時間削減)を同時展開し、月386時間を達成 |
| AI前提の設計思想 | 既存フローにAIを追加するのではなく、AIがある前提で業務フローを一から組み直す |
| 56床でも再現可能 | 大規模病院ではなく56床の中小病院での実測値。小規模組織でも同様の設計が機能することを実証 |
出典: 医療法人正幸会 正幸会病院「正幸会病院(56床)、Henry AIで記録業務を”AI前提”に再設計」(2026年6月29日)
