Microsoft、ExcelやOutlookのAI処理をOpenAI・Anthropicから自社モデル「MAI」に切り替え開始
2026年7月7日、Bloombergの報道によると、MicrosoftがExcelやOutlookに搭載されているAI機能の処理を、OpenAIやAnthropicの外部モデルから自社開発モデル「MAI」へ段階的に切り替えていることが明らかになりました。毎週数万件のAIプロンプトがすでにMAIで処理されており、AIツール市場に大きな構造変化の波が訪れています。
MAIとは何か——Microsoftが独自開発した7つのAIモデル群
MAI(Microsoft AI)は、Microsoftが2026年5月のBuildカンファレンスで発表した自社開発AIモデルのシリーズです。今回の発表ではMAIシリーズのうち7つの新モデルが公開されており、そのうちの1つはAnthropicの最上位モデルに匹敵するコーディング性能を低コストで実現するとMicrosoftは説明しています(Microsoft発表)。
これまでExcelとOutlookのCopilot機能は、OpenAIやAnthropicの外部モデルを主力として活用してきました。しかし現在はMAIモデルが週数万件規模のプロンプトを処理する段階まで移行が進んでいます。今後はTeamsの文字起こし機能にもMAIモデルが適用される予定です。
この動きは単なるコスト削減にとどまりません。大手テクノロジー企業が外部AIベンダーへの依存から脱却し、自社モデルの内製化を進めるという業界全体のトレンドを象徴しています。GoogleやMetaも同様の自社モデル強化を進めており、AI開発の主戦場が「誰のモデルを採用するか」から「自社でどれだけ作れるか」へとシフトしつつあります。
なお、OpenAIとの既存パートナーシップによる割引アクセスは現時点で維持されていますが、この契約には期限があるとされています。Microsoft AIのCEOであるMustafa Suleyman氏は、Anthropicへの支出を最終的にゼロにする意向を明言しています。
“We pay a lot of money to Anthropic — so our goal is to reduce and ultimately eliminate that cost.”
(筆者意訳:私たちはAnthropicに多額の費用を支払っています。その支出を削減し、最終的にはなくすことが目標です)
── Mustafa Suleyman(Microsoft AI CEO)、Build 2026にて
Copilotを導入済みの企業が今すぐ確認すべきこと
Copilotを日常業務で使っている企業にとって、今回の変化は「知らないうちに使っているAIが変わっていた」という状況です。PYMNTS.comも報じているように、Microsoftはコメントを拒否しており、切り替えの全貌は明らかにされていません。
具体的にどんな影響があり得るのか、3点を整理します。
① AI回答の品質・挙動が変わる可能性がある
外部ベンダーのモデルからMAIへの切り替えは、回答のトーン・精度・言語対応に微妙な変化をもたらすことがあります。「今まで通りの回答が出ない」と感じた際は、モデル切り替えの影響を疑うことが現実的です。
② 料金体系が今後変わる可能性がある
現状は同一料金ですが、OpenAI・AnthropicのモデルがCopilotの「プレミアムオプション」として分離課金されるシナリオも業界内では想定されています。契約更新前には最新情報を確認する習慣を持つことが重要です。
③ Microsoft以外のAIベンダーも同様の動きをとる可能性がある
今後、Google WorkspaceやSalesforceなどのSaaS製品でも、組み込まれているAIモデルが自社開発品に切り替わるケースが増えることが予想されます。「ツールが変わっていないから安心」ではなく、ツールの中身(モデル)も追いかける目線が必要になっています。
中小企業が今やること——Copilotアップデートの追い方
Microsoftの自社モデル化は大企業の経営判断ですが、その影響はCopilotを使う中小企業にも直接届きます。「で、うちは何をすればいい?」という問いに答えます。
まず、アップデートログを定期的に確認する習慣をつくることが最初の一歩です。MicrosoftはCopilotの変更内容を「Microsoft 365ロードマップ」(https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-365/roadmap)で公開しています。月1回チェックするだけでも、モデル切り替えによる機能変化を早期に把握できます。
次に、社内でCopilotを使っているメンバー同士で「挙動の変化」を共有する仕組みをつくることが現実的です。「Excelのデータ整理の提案が変わった」「Outlookのメール要約の質が変わった」といった現場レベルの気づきを集める場を設けるだけで、組織としての対応速度が上がります。
MAIモデルの精度は現時点でOpenAIやAnthropicの主力モデルに追いついていない部分もあると独立系メディアは指摘しています。しかし、Microsoftの開発速度と投資規模を踏まえると、今後12〜18か月での品質向上は十分に見込まれます。自社のCopilot活用を見直す余裕があるうちに、業務フローへの影響を事前に把握しておくことが、変化に慌てない備えになります。
出典: Bloomberg「Microsoft Replaces OpenAI, Anthropic With Own AI in Some Apps」(2026年7月7日)/PYMNTS「Microsoft Quietly Shifts Thousands of Office Prompts to In-House AI」(2026年7月)
