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企業事例

はなさく生命がAIコール保全の実証実験でROI 3,000% — 投資額の約30倍の事業インパクト

この記事の監修者 株式会社デジタルゴリラ

導入企業概要

はなさく生命保険株式会社(東京都港区)は、日本生命グループのダイレクト型生命保険会社。今回の実証実験では、株式会社Mico(大阪市北区)と株式会社アグレックス(東京都新宿区)が共同で支援にあたった。

Micoは2017年設立のAI技術企業で、累計調達額63億円・導入実績5,500ブランド超の実績を持つ。アグレックスは1965年設立で30年以上のコンタクトセンター運営実績を持つ企業だ。

導入の背景と課題

ダイレクトチャネルでの加入者が増える一方、加入後のフォローが希薄化し、保険料未収による意図しない契約失効が課題となっていた。従来の対策は郵便やSMSなど一方通行の通知が主体で、顧客に届きにくい状況が続いていた。

保険料の未収は保険契約者にとっても不利益だ。通知が届いていなかった、見落としていた、忘れていた——その一つひとつが「意図しない契約失効」につながる。限られた人員で複数施策を同時に進める必要があり、人手だけでは対応しきれなくなっていた。

導入したAI / プロセス

Micoが提供する「Mico Voice AI」を活用し、顧客の状況に応じたマルチチャネル設計を導入した。仕組みのポイントは「届かなかったら、次の手段に自動で切り替わる」フォールバック構造にある。

具体的な流れはこうだ。LINE登録者にはLINEで接触を試みる。未登録者にはAIコールまたはRCSで接触する。AIコールがつながらなかった場合には自動でSMSを送信し、必要に応じて有人オペレーターへ転送する動線も整備した。

音声で要件を伝えることで、文字通知よりも記憶に残りやすい効果も検証された。「文字では読み飛ばされる情報が、声だと耳に残る」——その差が今回の成果の一因でもある。

「これまで一方通行だったお客様へのコミュニケーションが、お客様一人ひとりの状況に合わせた双方向のサポートへ転換し、失効率の改善という結果につながりました」

(出典:はなさく生命保険 CRM推進部 課長補佐 渡邊真人氏 プレスリリース 2026年7月13日)

成果(数字)

実証実験の結果として、以下の数字が報告されている。

  • 接続顧客の要件伝達成功率:95%
  • AIコール接続率:約40%
  • 失効率改善:従来比約5%改善
  • ROI:3,000%(投資額の約30倍)(LTVベースの試算値)

接続できた顧客の95%に要件が伝わったという数字は、音声チャネルの強みを端的に示している。テキスト通知では「届いているのに読まれない」問題が起きやすいが、AIコールはつながった時点でメッセージが届く確率が格段に高い。

ROI 3,000%という数字は、LTV(顧客生涯価値)ベースで算出されたものだ。保険契約が失効せず継続されることで、長期にわたる保険料収入が保全される。この長期インパクトをコストと比較すると、投資額の約30倍の事業価値が生まれたという結論になる。

中小企業が今日から使えるポイント

この事例の本質は保険業界の話ではない。「督促や連絡が相手に届かない」という問題は、業種を問わず多くの現場が抱えている課題だ。

1. 「未回収・未返信リスト」への多段階アプローチ

今回の事例で実践されたのは、「1回送って終わり」ではなく「届くまでルートを変え続ける」設計だ。これは保険料未収に限らず、請求書の未回収、商品の返品連絡、アンケートの未回答、契約更新の確認など、あらゆるフォロー業務に転用できる。

具体的な応用を考えてみると、たとえばこうなる。まずメールで連絡する。反応がなければSMSに切り替える。それでも反応がなければ電話(AIコールまたは有人)で確認する。最終的に担当者が対応に入る——この「段階的なフォールバック」設計が、今回の成果を生んだ構造だ。

自社の督促・フォローフローを棚卸しするとき、問いかけてみてほしいのは「1回送って終わりになっている連絡がないか」という一点だ。そのリストが改善の出発点になる。

2. マルチチャネル設計の考え方

「LINE→AIコール→SMS→有人転送」という順序設計には、明確な意図がある。コストが低く・心理的ハードルが低いチャネルから先に試し、それが届かなかった場合にコストと人手をかけるチャネルへ移行する。リソースを効率的に使いながら、接触確率を最大化する構造だ。

中小企業がこの構造を模倣する際、すべてのチャネルを一度に用意する必要はない。「まずメール、次にSMS、それで動きがなければ電話」という3段階でも、「1回送って終わり」よりははるかに接触率が上がる。重要なのは「届かなかったら次の手段を自動または手動で試す」という設計思想を持つことだ。

3. ROI 3,000%の構造を読み解く

ROI 3,000%という数字は、どのように成立しているか。プレスリリースにコスト内訳の詳細は記載されていないため、以下は筆者による一般的な推定だが、AIコールを活用したコンタクトセンター施策のコスト構造として想定される要素は次のようなものだ。

  • コスト側: システム利用料(月額または従量制)、通信費(発信費用)、導入・設定費用、有人対応が発生した場合のオペレーター人件費
  • リターン側: 失効を防いだ契約数×その契約のLTV(保険料収入の継続期間)

保険契約のLTVは一般に高い。数年から数十年にわたる保険料収入が、1回のAIコールで保全されるとすれば、コストに対するリターンは桁違いになりやすい。

自社での活用を検討するときは、同じ問いを立ててみるといい。「失った場合にLTVがどのくらいになる顧客・案件に対して、フォロー連絡を送っているか」——そのLTVが高い領域ほど、同様のROI構造が成立しやすい。


出典: 株式会社Mico プレスリリース(2026年7月13日)

株式会社デジタルゴリラ