若年層の情報収集手段として圧倒的な影響力を持つTikTok。

全世代での認知度が70パーセントを超え、特に10代では90パーセント以上に達する巨大プラットフォームは、不動産業界の新たなマーケティングチャネルとして注目を集めています。

 

従来の広告手法とは異なり、エンターテインメント性の高い動画コンテンツを通じて自然な形で物件情報を届けられることが特徴です。潜在的な需要の掘り起こしにも効果を発揮する一方で、運用には独自のノウハウが必要となります。

 

本記事では、不動産会社がTikTokマーケティングを導入する際のメリット・デメリットや、効果的な活用方法について詳しく解説します。

 

 

TikTokマーケティングとは

TikTokマーケティングとは、TikTokを活用して企業やブランドの宣伝効果を高める新しいデジタルマーケティング手法のことを言います。

 

動画の長さは通常15秒から60秒の範囲で投稿されていますが、最近では1分以上の動画配信も可能になりました。

食品やコスメティック製品などの販売実績が特に目立ち、SNSを通じた購買行動「TikTok売れ」と呼ばれる現象が、新たな販売チャネルとして期待を集めています。

 

 

TikTokマーケティングに注目が集まる背景

NTTドコモ モバイル社会研究所が行った最新の市場調査によると、TikTokの認知度は全世代で70%に達し、10代の男女では90%、20代から30代の女性では80%を記録しています。

利用者の中心は若い世代ですが、30代や40代へと利用層が拡大傾向にあり、幅広い年齢層での認知度は今後さらに上昇する見込みです。

参照：2024年一般向けモバイル動向調査

 

将来の主要な消費者となる若年層において、商品購入時の判断材料として重視されているのがSNSでの評価や口コミです。

女性の60パーセントが「SNSの商品紹介動画をきっかけに購入した経験がある」と答えており、収益拡大にはSNS活用が不可欠な状況と言えるでしょう。

 

数年後には現在の若年層が消費の中核を担い、30代・40代は経済的な余裕から自己投資型の消費行動を取る世代へと変化します。

TikTokマーケティングの早期導入は、SNSを情報源として購買判断を行う消費者層の獲得につながるのです。

 

 

不動産会社がTikTokマーケティングを行う4つのメリット

「TikTokマーケティングが注目されていることはわかったけど、不動産業界でも取り入れるべきなの？」と気になる方もいらっしゃるかもしれません。

不動産会社がTikTokマーケティングに注力するメリットはたくさんあるんです。

以下にまとめてみましたので、自社の商材や状況と照らし合わせて導入を検討してみてください。

 

TikTokマーケティングには、以下の4つの優れた特徴があります。

• 情報の拡散スピードが速い
• 別の販売チャネルへの誘導が簡単
• 視聴者の購入単価が高額
• 動画制作の初期投資が少なくて済む

それでは各特徴の詳細をご説明いたします。

 

 

①情報拡散スピードが速い

TikTokの投稿動画は、フォロワー以外にも100名ほどのユーザーに表示される仕組みを採用しています。視聴者から「いいね」を獲得すると「おすすめ」欄への掲載頻度が上がり、自然な形で認知度が向上していくのです。

 

不動産業界の顧客となる方々は、「今すぐに引っ越しをしたい」「引っ越しや物件の購入を考えている」という顕在的なニーズを持つ方だけでなく、「今の住まいに漠然と不満があり、良い物件が見つかったら引っ越しを考えたい」「将来的に、副業として不動産投資を考えている」といった潜在層もターゲットになるでしょう。

TikTokのおすすめ機能によって、他のSNSよりも効果的に、この潜在層へもアプローチできることがメリットと言えます。

 

また、情報拡散の効果を高めるハッシュタグ機能も見逃せません。

投稿内容に合わせて関連キーワードをタグ付けすることで、同じ興味を持つユーザー同士がつながりやすくなります。

 

 

②別の販売チャネルへの誘導が簡単

上記の市場調査によると、TikTok動画の視聴者の20%が追加のアクションを起こしています。検索やシェアといった行動がその代表例です。

 

短時間の動画視聴から興味が広がり、商品やサービスの詳細検索へとつながるため、自社サイトや他のSNSへの誘導効率が優れています。

TikTokの動画コンテンツで物件や発信内容に興味を持った視聴者が、より詳細な情報を求めて自社サイトを訪れる、という動線を作りやすいことが特徴です。

 

 

③視聴者の購入単価が高額

TikTokプラットフォームは、他のSNSと比較して商品購入につながる確率が高いという特徴があります。

 

BUYMAやAckaなどの有名ファッションブランドは、ブランド財布の紹介や1万円コーディネート企画、インフルエンサーによるスタイリング提案など、購買意欲を刺激する動画を配信中です。

視聴者の「購入希望」コメントを獲得し、実際の売上向上に結びつけています。

 

商材の単価が高い不動産業界においても、この特徴はメリットと言えるでしょう。

 

 

④動画制作の初期投資が少なくて済む

TikTokの魅力は動画制作の初期投資を抑えられる点です。アプリ一つで撮影から編集、特殊効果まで必要な機能がすべて揃っています。

 

■TikTokアプリに搭載されている制作機能

• 映像撮影ツール
• 動画編集・結合機能
• 視覚効果の追加機能
• 再生速度の調整機能
• 音声加工ツール
• 音楽挿入・音量調整
• 音声録音機能
• テキスト挿入ツール

 

専門機材の購入が不要でスマートフォン一台から始められます。

動画編集アプリを併用することでコンテンツの質を高められますが、TikTokアプリ一つでも十分に動画を制作できるのは、チャレンジしやすいですよね。

 

TikTokで集客力をアップするための動画編集のコツは、こちらの記事で詳しく解説しています。

＞＞不動産TikTok動画編集の5つのコツ！集客力アップの秘訣とは

 

 

不動産会社がTikTokマーケティングを取り入れる3つのデメリット

 

TikTokの活用にはポジティブな側面だけでなく、注意すべき点もあります。

• 収益化までの道のりが長い
• 否定的な反応を受けるリスクがある
• 利用者層が限定的である

それでは詳細をご説明いたします。

 

 

①収益化までの道のりが長い

TikTokはエンターテインメント性が重視されるプラットフォームです。ビジネス色の薄さがユーザーとの距離を縮める一方で、販売促進効果を得るまでに時間がかかります。

 

ユーザーに動画コンテンツをエンターテインメントとして楽しんでもらうことはできても、そこから売上に直結させるのは難しいということですね。

 

購入ボタンや割引クーポンへの誘導が複雑なため、自社サイトなど他のマーケティングチャネルを経由して購入に繋げるという、間接的な集客が主流となっています。

 

 

②否定的な反応を受けるリスクがある

TikTokの情報拡散力の高さは諸刃の剣。批判的な意見が広がる炎上のリスクも伴います。

 

デジタルリテラシーがそこまで高くない10代利用者が多いプラットフォームのため、予期せぬ形で投稿へのコメント欄が荒れる事例も発生しています。

好意的な反応だけでなく、批判的な意見への対応策も事前に検討しておく必要があります。

 

特にSNSでコメント欄が荒れるなどの炎上が起きた際は、影響が広がらないよう迅速な対応が求められます。

企業で運用する際は、トラブル対応を行う担当者のリソースを確保しておくことが大切です。

 

コンテンツ制作、継続的な投稿が必要であることも含め、時間・人的資源を用意できるのか、運用開始前に検討しておくと良いでしょう。

 

 

③利用者層が限定的である

TikTokの主要利用者は10代から30代に集中しています。利用者の年齢層が広がっているとはいえ、販売ターゲットが若年層に限定されやすい傾向があります。

 

若年層の関心事はファッション・飲食・音楽・化粧品などの特定分野に集中しがちです。収入が高くない分、低価格帯の商品が好まれることが原因でしょう。

 

とはいえ、不動産業界のTikTok運用で集客に成功している事例も多数あります。

プロに自社の強みや特徴を分析してもらい、運用支援やマーケティングアドバイスを受けることも検討してみましょう。

 

 

不動産会社がTikTokマーケティングを行うなら：目標設定をしよう

闇雲に投稿を続けるだけでは、方向性がブレてしまったり、数字が伸び悩んだ時に適切な対策が取れなかったりします。

 

そんな状態を避けるためにも、TikTokを活用したマーケティング施策で成果を上げるには、具体的な数値目標の設定が不可欠です。

目標を2段階で設定することがおすすめですよ。これから詳しく解説いたします。

 

 

1. 最終目標値を設定する

最初に、企業の成長に直結する最終目標値（KGI）を設定しましょう。

KGIとはKey Goal Indicator（キー・ゴール・インジケーター）」の略語で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。

数値化できる具体的な目標がなければ、マーケティング活動の方向性が定まりません。

 

TikTok運用によって「年間の内見申し込み数を30%増加」のように、明確な数字を含む目標設定が効果的です。

SNS担当の方が独断で決めるのではなく、事業責任者と一緒に擦り合わせる機会を設けると、会社にとって本当に適切な目標設定がしやすくなるでしょう。

 

 

2. 進捗管理指標を設定する

最終目標が決まったら、達成に向けて具体的な進捗管理指標（KPI）を設定しましょう。

KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、直訳すると重要業績評価指標を意味します。

 

KPIを設定する上では、以下の観点がポイントになります。

• 目標到達までの道筋を明確化する
• 目標実現に何が必要か考える
• 具体的な行動計画を立てる

 

例えば「年間の内見申し込み数を30%増加」という最終目標に対して、進捗管理指標を考えてみましょう。

■目標到達までの道筋：自社サイトへの訪問者数を現状の2倍に増加

■達成に向けたTikTokでの具体的な施策例：

• 自社サイトへの誘導を促す動画コンテンツの制作
• 物件情報へのアクセスを促すリンクを設定

 

このように最終目標から具体的な行動計画まで、段階的に落とし込んでいく作業が大切です。

目標達成の観点で競合他社のTikTok投稿内容を分析してみると、また新たな発見があるかもしれません。ぜひ試してみてください。

 

 

不動産会社がTikTokマーケティング効果を高める3つのポイント

最後に、不動産会社がTikTokマーケティングを行う際に意識すべき3つのポイントをご紹介します。

 

1.アルゴリズムの基本を理解する

まずはTikTokのアルゴリズムを理解することが大切です。ルールを知って、攻略していきましょう。

動画の表示順位を決めるTikTokのアルゴリズムは、「加算式アルゴリズム」と「減算式アルゴリズム」の2種類で構成されています。

 

加算式アルゴリズムは、ユーザーからたくさんの反応を得られた動画が再生回数を長期的に伸ばすことができる、という仕組みです。

公式から具体的な指標は公開されていないのですが、以下のような要素が影響すると推測されます。

• 「いいね」獲得数
• コメント数
• シェアの数
• 視聴継続時間
• 最後まで視聴した回数
• 繰り返し再生回数
• アカウント内の他動画視聴数

 

一方で減算式アルゴリズムは、動画を上位表示させなくする仕組みです。

以下の要素が要因と言われています。

• 視聴離脱率
• TikTokを離脱し、他のSNSや外部サイトへ遷移
• 「興味なし」ボタンを押されている数

 

この2つのアルゴリズムを意識した動画制作が重要です。

 

 

2. ブランド認知度を早期に高める

TikTokでの効果的なマーケティングには、初期段階でのブランド認知が不可欠です。

フォロワー数増加には定期的に動画を投稿することと、ユーザー参加型企画の実施が有効と言われています。

 

 

3. ユーザー視点の動画制作

動画制作で最も重要なことは、動画のターゲットを明確にし、視聴者の求める情報や抱いている感情を理解することです。

 

例えば10〜20代の学生向けの賃貸物件を多く取り扱う不動産会社が、ファミリー層向けのコンテンツを多く発信し、30代女性のフォロワーを増やしたとしても、企業としてのKGIの達成にはつながらないでしょう。

動画を作り続ける中でターゲットがブレてしまわないよう注意しましょう。

 

有名人やインフルエンサーの起用は注目度を高めますが、商品やサービスとの相性が悪いと効果は限定的です。

視聴回数は増えても商品への関心につながらない、という結果を避けるため、ターゲット層の興味や価値観に沿った内容作りを常に心がけていきましょう。

 

 

まとめ

TikTokは、若年層を中心に高い認知度を持つ動画プラットフォームとして、不動産マーケティングの新たな選択肢となっています。

主な特徴として、情報拡散力の高さ、他チャネルへの誘導のしやすさ、購買意欲の高いユーザーの存在、低コストでの動画制作が挙げられます。

一方で、収益化までに時間を要する点や、否定的な反応へのリスク管理、利用者層の偏りには注意が必要です。

 

効果的な活用には、TikTokアルゴリズムの理解、ブランド認知度の早期向上、ターゲット層に合った動画制作を意識しましょう。

 

また、具体的な数値目標（KGI）と進捗管理指標（KPI）の設定が、戦略的な運用の鍵となります。

潜在顧客の開拓ツールとして、TikTokの特性を活かしたマーケティングを、この記事を参考にぜひ実践してみてくださいね。